2012/07/17

Vol.1 part4『参考にした本の紹介』


KUMAUHEI WORKS CAUTION!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! vol.1テキスト版
part4 『参考にした本の紹介』

ブックアート作品『注意!-京都貼紙地図-』を紹介するUstreamの
放送内容をテキスト化したものです。

part4では、作品を制作するにあたって参考にした本を
紹介しています。
参考にした本の中身の内容ではなくて
造本に注目して紹介しています。

出演
KUMAUHEIWORKS(以下:隈) 画面左下
なんしーさん(以下:な)声のみ


                              


:最初に紹介するのは、『1000億分の1の太陽系』という本です。

  普通に“ISDN”がついていて出版されている本なんですが・・
  あ・・“ISBN”ですね。ISDNって言ったら昔の通信回線ですね。

:昔の通信回線ですよね。

:あの・・全然しょうもない話していいですか
  こないだ ふと気になったんですけど
  ISDNと光ファイバーの間(の時期)にあった
  ラストワンマイルのインフラってなんでしたっけ・・?

:ADSLじゃなかったけ?

:そうだ!それ。
  ADSLの名前がずっと出てこなくて・・
  のどに小骨が詰まったような感じだったんだ。

:w出せてよかったすわ・・

1000億分の1の太陽系ってどういうことかというと

  これね・・iMacにしてからカメラの位置が高くなったので
  すごく物を紹介しづらくなってしまいましたね。

(本を見せる)



:すごい。なんだこれー。スリーブに入っている。

:ん・・その感想はなんすか?
  (映像に遅延があるためやり取りがちぐはぐになっています。)

:w動作が多い本ってテンションあがりますよね。

:そうですね。
  これはほんの形をしているんですけど
  パッとみが文章は全然なくて線が引いてあるんですよ。

:ほうほう

:線がずっと引いてあって、
  この線は何かというと1000億分の1の縮図になってるんです。



:うん

:本の幅が14cmくらいなんですけど
  その距離の分と分厚さがあって
(本のページをめくる)
  ここに、太陽って書いてあるんですよ。


  見えるかなー
  ちょっとページをめくっていくと
  水星って書いてある


  水星っていうと今関西では話題になっていますけどね。

:あーtofuくん?

神戸の方で・・

:神戸のほうでぶいぶい言わしている。

:こないだ水星という曲をリリースされて
  iTunesストアで1位になってはったりしますけど。

:後輩がPVをつくるのに協力しているらしくて・・

:まあ、水星の話はこれくらいにして 
  水星の次には地球とかってなっていって 
  これは太陽から太陽系の距離を
  このようにして
  実寸を1000億分の1にして、
  本の幅と本のページ数にして表していて、
  太陽系をこの中にとじこめましたというのがこの本です。
  ちなみに、本体価格3200円+税で売ってます。

:なかなかいい値段・・。

なかなかいい値段なんですけど、これは
  東京に遊びにいった時に
  本屋さんで見つけて・・
  どこだったかな。

:NADiffとかですか?

青山ブックセンター本店だったと思います。

:ああ、はいはい。

松田さんの『眼の冒険』という本があって
  青い表紙ですごく印象的なんですけど
  この本がすごく好きやってホームページでは
  本というオブジェクトに対して
  アプローチしている物が結構あるんです。

  ・・ホームページていう言い方してしまったね。

:懐かしい感じですね。

:ウェブサイトにっ
  行ったら、
   いろいろ紹介してあったんですけど
  話だけだとなんのことだか
  わからなかったんですよ。
  (ABC本店には)それが立ち読みできる状態で
  いろいろ置いてあって、
  ・・立ち読みっていうのかわからないですけど
  感動したんですよね。これに。

  さっき言ったみたいに
  本っていうのは、物質・・・
  言葉という形や色や重さがないものを
  文字という見えるものにした時にどうしても
  初期のころは粘土板みたいな
  重さをもたなければならなかった。

  それがどんどん軽くて薄くて
  持ち運びやすいものになっていって
  重なるという事で、
  一方向に伸びていく言葉というものを
  表現できるようになっていきましたよね。
  そういう一方向にのびるものというのは
  言葉だけではなくて
  距離というものも
  一方向にのびるものとして
  扱う事ができて、
  その膨大な距離を
  本っていう実際の縮図で再現していて
  尚かつ
  このようにめくっていくという
  本の形をしているという。

:うんうん。

:こうやってページをめくっていくうちに
  これはすごい事だなと思うようになり、
  ・・・衝動買いですよね。
  ほとんど、読めもしない本なんですけど。

  1000億分の1の太陽系と400万分の1の高速っていう形で  
  セットになっていて
  距離と同時に記録とかっていう時間も
  書かれているので読む事もできるんですが、
  これは、中身は小説でも実用書でもなんでもなくて
  本としか言いようがないんですけど。
  これはすごく面白いです。

:ちなみにリメイク版が
  出ているらしいですよ。

:そうなんや。

:1600億分の1の太陽系ってなって、
  本のサイズが62.5%に縮小された
  リメイク本って書いてあります。

:そ、それは買わなきゃいけないですね。

:でもこれすげー高いですよ。5万円とかって・・

:えーーー!
  それは、蛇腹にしたらそうなりますよね。
  並製本の形にできないもの・・
  5万円かー

:5月頃発売予定って書いたまま発売予定って書いて
  止まってますけど・・

:なんか、同じにおいがするな・・
  5万円は、ちょっと高いですよね。
  あの・・・奈良美智さんの全作品集がでましたけど。

:うんうん

:作品をネット上で告知したりしてかなり必死で集めて
  いろいろな作品が載っている
  ほぼ全集というかたちの本が出る事になって、
  15,000円くらいなら買おうかなって思ったら
  30,000円だったんですね。30,000円かーと思って・・

:ちょっとキツいですねー

:熱狂的なファンというわけでもなくて・・
  好きだけど・・

  本1冊に対して30,000円っていう
  値段は僕は手をださない値段でした。

:そうですね。
  見る頻度とか考えたらね・・
  なんの為に払う30,000円なんだろっていうところが。

:そうですね。

:1600億分の1の太陽系に50,000円払うのと
  作品全集に30,000円払うのとでは、ちょっと違うような気がする。

:前者の方は作品ですからね。言ってしまえば。

:コンセプトに対してお金を払うのと
  全集を買うのとではちょっと違うかなと。
  うーん、
  全集はアイドルのコンプリートボックスを買うのと同じ。

:まあ、でもなめまわすようにしては見ないですけどね。
  そういうものも。
  そのつどそのつどで買ってった
  少ない量の物を何度も繰り返し見るもので、
  全集みたいなものが買えるようになったっていうのと
  その時の熱狂ぶりとは違ったりしますからね。
  ということで
  次にいこうと思うのですが。

:はい。

:次の本は、『アクロバット前夜』という本で
  リトルモアからでてるんですが
  これは、小説です。



:あれですよね。星について書いたりしてる人ですよね。

:・・福永さんの他の作品を僕はぜんぜん知りません。
  ですが、
  この本以外にも変わった造本の物はあるんですけど
  この本は、一見すると普通の製本じゃないですか。

:うん。

:白くて、タイトルが書いてあって
  保坂和志の帯が書いてあって
  僕は、保坂和志さんはすごくファンなんですけどね。

:あー、好きそー

:好きそうって言われるのめっちゃハラタツっていうねw

:wわかります。わかるから言ったろうって思って。

:『カンバセイション・ピース』っていうのがすごく好きで。

:ああ、はい。

:まあ・・とにかくこの本を紹介します。
  これ映るかな・・


  えっと、この・・画面を見ていただくとわかるんですけど
  ナンバリングしてあるんですよ。
  123456789・・・って、縦にね。
  これはノドの部分にも小口の部分にもしてあって、
  普通ページ数っていうのは、右下とか左下にしてあるんですけど
  それではなくて行のナンバリングがしてあるんです。

  行のナンバリングがなぜ必要なのかというと
  この本は、普通の本みたいに
  一行目を読んだら次は下の行にいって
  その行を読んだらまた次はその下というように読む本ではなくて
  一行目をこんな感じ読んでいくと、次にいくのはこっち
  次のページの一行目にいきます。さらに同じ一行目を読んでいき
  ページをめくってまた一行目を読んでいきます。
  このようにして、一行目を最後のページまでずっと読んでいくと
  今度は最初のページの二行目を読みます。
  そしてまたずっと二行目をページをめくりながら読んでいって
  その次は、最初のページの三行目を読むというような読み方をするわけです。

(本を読みながら)
  今本を読んでいるんですけど・・
  こういう速度で読む事になるんです。
  普通の本だと、1ページを読み切ってから次のページにいくので
  こんな間隔では・・速読できる人は別ですけど。
  ページをめくらないですよね。
  これは、さっき言ったみたいに
  普通の本は
  どんどんとつらつら長くなっていく文章というものを折って
  行を変えて適切な幅のもと読むので、
  読みやすい形で定着していますが
  この本は違っていて
  たぶんちょっと読みづらいと思います。 
  ふつうの本と比較したら。

:うんうん

:でも別にそれは、全然良くて。
  文字が一方向にどんどん進んでいくという感じを
  すごく体感できるんです。
  文章っていうものは、一方向にのびていくものなのに
  本っていうのは、それを折ってしまっている。
  それは、
  うどんをすするんじゃなくて
  スパゲッティを巻いて食べてるのに
  似たようなところがあると思います。
  変なたとえかもしれないですけど。

:うん。わかりよい。

文章ってそもそも長いものだから、
  一方向にどんどん読み進めていった方が
  文章というものの形を本当に再現しているような感じすらあります。
  この『アクロバット前夜』という本は。
  内容ももちろん保坂さんがほめているようにもちろん面白いですし。
 
:はい。なるほど。

内容の面白さについては虎の威を借るっていう・・

:w

:この本は、文章は長く伸びてくっていう形の特性を
  形によって再現している。
  その文章の器である本は、
  それに似たもの(距離)も表現できる
  っていうのが『1000億分の1の太陽系』です。
  『アクロバット前夜』っていうのは、
  あくまでも文字を読むっていう
  本の形をとりながらそれをやっていると思います。

  次は、急に普通の本になっちゃうんですけど


  これは『黄昏』っていう対談集なんですけどね。
  糸井(重里)さんと南伸坊さんの。
  ちなみに、南伸坊さんは
  回を重ねていった後の方にも出てきますけどね。
  トマソンの話で。

  この対談・・対談というか雑談なんですよ。
  内容はほとんどないような物なんですけど。
  これと似たようなアイデアの造本のものは
  他にもあると思います。
  たまたま僕の個人的な趣味で
  これを選んでいるだけというところは
  あるんですけどね・・。

  この本は、分厚くて軽い紙を使っています。
  本の中身はスカスカなんですよ。
  行もけっこう隙間が空いてたりして。
  だから読んでいくと・・
  さっきのアクロバット前夜程ではないですけど
  さくさくページが読み進んでいくんですね。
  本の特徴としては、
  距離を表すという話を先ほどしてましたけど
  本を読んでいたら、
  どこまで読んだのかっていうのが
  わかるじゃないですか。
(本の半分くらいのページをつまんで)


  ここまで読んだんだとしたら、
  もう半分読んだんだっていうことがわかると。

  薄い本だとそれがわからないですよね。
  内容もそんなに多くはないですし、
  薄い紙でもっと詰めて表現したら
  もっと薄い本になっちゃうんですよね。内容からすると。
  それを分厚い紙で余白をいっぱいとってやることによって、
  ページをどんどんめくっていくから
  どこまで読んだのか
  ・・自分はもうここまで読んだんだという感覚を
  すごく味わいやすくなっているんです。
  だから、本が物質として
  読むのに適しているって思っていたり
  愛着をもっていたりするのは、
  自分がどこまで読んだのかっていうことが
  すごくわかりやすい形・・
  厚みっていうかたちで現れてくるんですよね。
  横文字を使えば、すごく
  ・・インタラクティブだっていう言葉が
  ふさわしいと思うんですよ。

:ふんふん。

読んでる人が、私がここまで読んだなーっていう感覚を
  造本の力でだしているなと思って紹介しました。

  ふう・・

  次、また糸井さんが出てきましたけど


  『言いまつがい。』という本があります。

:はい。

ほぼ日読者で、造本が面白いといえばこれという本なんです。
  鉄板ネタ・・みたいなところがありますけど。
  『言いまつがい。』という本はどういう本かといいますと 
  ほぼ日刊イトイ新聞とうウェブサイトがありまして

:はい。

その中で、読者が投稿するコーナーがあります。
  日常の中で聞いた人の言いまちがいを投稿するものなんですが
  そもそも『言いまつがい。』というタイトル自体が間違っていて
  ぼくは言いまつがいという言葉に慣れてしまっているので
  普段誰かが言い間違った時に、「今言いまつがったやん」って言うと
  「お前の方が言い間違ってるやんけ」っていうふうにマジレスされる
  っていうことを日常生活の中で繰り返していますが・・・
  元ネタはこれであると。

:はい

これ・・内容を紹介すると面白いんですが・・
  内容を紹介すると趣旨が変わってきちゃうんで

(救急車のサイレン)

  めっちゃ救急車通ってますね・・
  うちじゃないけど

:あ、うちですね・・

:まあま・・
(本をカメラの前に出して)


  ウェブカメラだとたぶんわからないと思うんですけどね・・。
  四角くないんですよ。本が。
  どうしたらいいのかな・・
(試行錯誤する)
  あんまり(本の判型が四角くない事を)表現できないな・・

:裏に黒いものとかで・・

裏が黒いもの・・MacBookとか・

:並べた感じ。今のでわかったんじゃないかな?

:・・・そうですね。
  なんか、(他の本と並べた時に)
  ぴょこって(背表紙が)出てると思うんですけど
  ナナメになっているんですね。背表紙が。


  本棚とかに入れていても同じ判型の本ばかり並べていたら
  これだけちょっと出てきてしまうという・・
  本棚をきれいに並べたい人にとっては不条理なところがあって。
  なんて間違った本なんだっていう感じなんですけど・・

  本が、文字を書くメディアとして発達してきて
  ページをめくって文字を読むものなんですけど
  なぜか全部四角いんですよね。
  それって結局四角いと箱とかに
  入りやすいんでしょうね。
  本棚に入りやすいし、
  流通もさせやすいし、作りやすいし。
  情報である本というものは、
  造本に対して工夫はできるといっても
  やはり、そこは効率が重要であると。

  だから四角い本が普通になっちゃってるんですけど
  これは、内容自体がもう間違っているから
  本としても間違っていてもいいんじゃない
  っていうふうにして作られていて
  この(背表紙の)端の部分なんかも
  紙が最後までいってなくて
  接着剤がはみ出してたりとかっていう
  ある意味では
  常識の範疇から外れるようなことがなされていて・・
  すごい適当な位置に挿絵が入っていたりね。

  さっき(『アクロバット前夜』)みたいに読み方を
  変えているものがありましたけれど、
  これは、判型を変えたりとか
  接着剤がはみ出るような造本にしたりとか
  なんか、そういうことで
  自由にやっちゃってるっていう意味で面白いと思います。

  歯切れが悪いかな・・?

:大丈夫ですよ。

part5に続く)