2012/07/17

Vol.1 part2『本が本というかたちになるまで』

KUMAUHEI WORKS CAUTION!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! vol.1テキスト版
part2 本が本というかたちになるまで

ブックアート作品『注意!-京都貼紙地図-』を紹介するUstreamの
放送内容をテキスト化したものです。

part2では、現在の“本”がどのような変遷を経て
今のような形をするに至ったのかについて
作品にとって重要な部分を
時代の流れにそって語っていきました。

出演
KUMAUHEIWORKS(以下:隈) 画面左下
なんしーさん(以下:な)声のみ

                              

:というわけで、そろそろやりましょうかね。

:はい。

:まずこの話のあたまに出てくるのが
  この作品はブックアートである 
  という言葉なんですけど



  『京都!注意貼り紙地図』という作品が
  どういう作品だったのかという事を
  ざっくりと説明しながら始めます。

  画像的にはこういうものがありまして、
  これは、京都市美術館で
  展示をしたときのものです。


  京都市美術館で展示をしたっていうのは、
  この作品は卒業制作なので、
  京都の美大は
  基本的に卒業制作というものをつくったら
  ・・卒業制作(ってなにか)の説明はいらないかな・

:大丈夫だと思います。

:京都の美大の場合、
  卒業制作をつくったら
  基本的には京都市美術館に展示するんだ
  ということになっていて、
  京造は一昨年から違いますけど、
  精華大学はあいもかわらずというか・・
  今も京都市美術館での展示なんですけれども
  この写真は、その時の展示風景で
  まず、中心に(写っていて)地面にぺたっと
  (広げて)置いてあるのが
  この作品の本体ですね。



:はい。

:これが、一応なんというか
  本の形になっていて、
  とじるとこういうもので

  
  開くとこういう感じになると。
  これは、なんなのかというと
  地図なんですよ。

  どこの地図かというと
  京都市内の南は四条通(注:正しくは五条通)から
  北は御池通まで
  西は烏丸、東は河原町という区画の中を
  ずっと歩きましてここにある
  ・・画像でも見えていると思うんですが


  今は、ロードコーンが目立って見えていますが
  ロードコーンを集めていた訳ではなくて
  貼紙ですね。
  (道に)貼ってある貼り紙です。
  犬猫の糞尿をやめてくれ、であるとか
  駐車禁止であるとかっていう
  そういうものを全部すべからく
  ・・立ち入り禁止って書いてあるところには
  入りませんでしたけど
  マンションの中でも
  ここからは立ち入り禁止ですよと
  書いてあったら、
  引き返すというぐらいの感じ(の範囲)。
  建物の中には入らずに、
  外にあるものはすべて撮ったという感じです。

  それをある法則に従って、
  コラージュというか再プロットしていって
  一枚の大きな地図にしたと。
  それを、折り畳んで本っていう形にしました。
  というのが、
  作品の・・あまりないようには触れない版の概要ですね。

:はい

:内容については、
  これからやっていくという事なんですが。
  この時の展示としては、
  僕のちょうど後ろにあるものと
  同じパネルがあるんですが
  これに関してもいろいろありまして
  「!」とか「注意」っていう文字が
  いろいろと書かれているんですけれども・・
  こういうパネルを作ったりとか
  作業風景の映像を壁に投影してたりとか




  一番手前に見えるモニターには・・
  今、時間経過っていう文字が出ていますが
  ここでは、5分間のプレゼンテーションという形で
  映像にして流していました。
  これら全部がその時の展示なのですが

  この時は展示空間が暗かったので
  全然(目立たずに)写っていませんけれど
  ここにちっちゃい冊子が置いてありまして、
  8000字くらいの作品解説が書いてありまして
  ・・・自分で書いてたんですけれども。
  それを元にして
  この作品が
  どういう作品であるのかって言う説明を
  今からしていきます。
  ・・・ここまでで何かありますかね?

:ここまでで?

:なんもない?

:なんか、懐かしいなって思って。

:そう。僕も懐かしいなって思ってて
  というか、いつも懐かしいなって思ってて
  懐かしいなっていうことをいつもやっていると
  今がいつなのかがよくわかんなくなってきてくるというか。

:時間軸がさかのぼってしまいますから

:そんなに時間が経っていないのかなっていう感覚に
  陥りますけど。

:いや、そんなことはない。
  わたしも卒制に行ったので。

:年齢が数字だけ勝手に
上がっていくじゃないですか。

それは、そうですね。
  定期試験がある訳じゃないから。

:勝手にあがっていくから
  ちょっと困るっていうか・・
  今度オリンピックありますけど
  オリンピックの男子サッカーの代表(選手)とか
  みんな年下なのかと思うと
  ちょっとぎょっとするというか

ああ

:高校球児が全部年下なのかと思うと
  ぎょっとしたみたいな事を経過していって
  そうかサッカー(五輪代表)も
  みんなそうなのかってなって
  あと、そこらへんの居酒屋とかに入った時に
  バイトでやってる子らとかを見ても
  だいたい年下なのかと思うと・・ね
  びっくりしますよね。

そうそう。びっくりしますよ。
  なんかすいませんっていう気持ちになる。

:そう。やってもらってすいませんっていう気持ちになる。

ほんとすいません。

:酔っぱらっててすいませんって

いやいや

:っていう感じになりますけど・・
  こういう話をしながら時間経過っていうのが
  ずっと画面に出てるのがなんか・・・

せかされてる感じがしますよね。
  時間経過中っていう画面が出てると。

:貼紙でぼろぼろになっているのが
  多かったから時間経過によって
  新しい物や古い物が折り重なって
  街の中に存在しているという事を 
  説明していた画面ですけどね。
  まあ、そういう作品を作りまして・・ 
  まだ作品の全容が見えてないと思うんですけど。

なんのこっちゃという感じで、
  ブックアートもなにかわからんぞみたいなね。

:・・・という感じだと思うんですが、
  本当にゆっくり2ヶ月くらいかけて
  説明していきたいとおもうんですけどw

連ドラを待つくらいの感じですよね。毎回・・

:二週間に一回くらいやりますけどね。

もどかしい感じで。

:もどかしい感じで。
  しかも、しゃべり自体がもったいつけてますけどね。
  ・・まあ、うまくしゃべれないだけ
  っていうところもありますけど。

それ言っちゃっていいんかいな・・



:ブックアートという言葉が
  出てきたんですけれども
  それは、本の特徴や本の歴史っていうのを
  テーマにした作品のことなんですが
  どんな物があるかパッと思い浮かびますか?

本をテーマにした作品?
  なんか、本をかたどった彫刻とか?

:そう、そういう物も含まれると思います。
  海外のアーティストですか?

日本人で、なんか本の彫刻的なものを作る人で・・

:そういった作品とか、
  本自体を素材としてあつかったものとか
  本の形態をとることによって
  なにかメッセージを発するものとか
  そういうものがありますが、
  僕の作品もジャンルとしては
  ここに属するものだと思っています。

  ところで、本ってどうするものだと思いますか?

読むものだと思います。



:(つぎのスライドが間違って見えてしまう)
  ちょっと今ちらっと見えましたけど
  あの・・
  本は、文章を載せる為のものであると。

  本はどうするものかというと
  読むものだ というふうな
  答えが出てくると思うんですが、
  それは、文字があって文章になっていて
  それを読む為に
  今の本という形・・・


  紙の束があって、片方だけがとじてあって
  もう片方が開いているという
  本(冊子)の形になってきて
  長らく文字を読む為のメディアとしては
  最も適しているというふうに
  考えられてきたし、
  現状まだそのように思われているかな・・
  というものが本なのですが

はい。

:文字の話をする前に
  少し絵の話をしなければいけなくて
  絵っていうのも
  こういうところまでさかのぼるんですけど
  なんていうか


  こういうラスコーとかアルミタラの壁画みたいな
  原初的な人が絵を描き始めた
  最初期のころの絵というのは、
  牛の絵とか動物の絵なんかが多いですけど
  こういったものは、
  教科書やなんかに載ってる説明でいうと
  狩りをするために
  何か狩りのやり方を図示したんだとか
  他の考え方では、
  集落の中でシャーマン的な立場の人がいて
  その人が一人で

  今で言うところの宗教的な儀式の際に
  描かれたんだとか
  っていうふうに考えられていますけれど
  絵にしている時点で、
  一人の人間が他の人に対して
  何かを伝えようとしたんだっていうことは
  間違いと思うんですよね。

うんうん。

:絵ってうのは言うても絵ですから
  言葉とは違います。
  文字というものができる以前に
  既に人間は言葉というものを持っていました。
  なのでしゃべったりはしてると。
  しゃべり言葉だったら通じる事が
  絵を描いても通じないという事が
  あるわけですよ。

(スライドをめくるミス)

  ・・スライドが、
  手動で位置をうまくあわせないと
  通り過ぎちゃうので・・
  最初に機材が変わったっていう話をしましたけど
  これ、OSにLionが入ってて
  (デフォルトの)プレビューというソフトを使って
  表示しているのですが、
  なんかPDFを上手く順繰りに動かしてくれなくて
  なんか・・それで、まごまごしますけれど・・

(気を取り直して)



  で、絵だけでは上手く伝わらないので
  組み合わせてピクトグラム化することで
  伝えるということがなされるようになってきました。
  そこからもうちょっと発展すると
  漢字のもとになった象形文字(甲骨文字)とか
  エジプトの象形文字とか
  誰が何をどうしたといったような事が
  記号的な絵の組み合わせによって
  作り出されるようになってきたと
  さらにそのピクトグラムというものを
  体系化したものが、文字ならびに文章であるわけです。

  それは、体系化っていうか便化、簡略化ともいえるんですよね。
  よりしゃべり言葉に近いように
  誰が何をどうしたっていうような話をする時に
  いちいち“牛が~”っていう話をする時に
  牛の絵を描いていたら大変なわけですよ。

うんうん

:そういうのを簡略化していくと。

  だけど、簡略化していったら
  元々何の絵だったのかっていうのを
  読み取れなくなっちゃいますよね。
  そしたら、リテラシーというか
  コードをエンコードする力が
  必要となってくると。

  このように体系化して簡略化していく事で
  しゃべり言葉で表現できていたことを
  なるべく図示できるような形にしていったものが
  文字であり文章であると。
  そう言うかたちで人間は文字というものを獲得してきました。


  文字は言葉を可視化したものである。
  そうする事によってどうなったかというと
  しゃべり言葉というのは音ですから
  目の前にいて音が聞こえる範囲で、
  なおかつ、その時にしか伝える事ができない。
  だけど、文字=図示=可視化することによって
  時間を共有しなくても
  しゃべった言葉を伝達できるようになったと。

はい。

:今、映像というものを使って
  こういったことを話していると
  少し変な感じになりますけどね。
  しゃべり言葉でも時間と場所を越えて伝えられる
  録音・録画というものが
  でてきたのはもっともっと後になりますけど。
  映画の誕生っていうところまでいかないといけないですし。
  録音はもうちょっと前ですけど。
  そういうのがない段階だと
  文字というものができたおかげで
  文字の形をとることによって
  言葉というのはほぼほぼそのままのかたちで
  時間を共有せずとも
  伝達できるようになったと。

  しゃべり言葉っていうのは、
  私が今しゃべっている間にも
  時間は流れていくように、
  時間に沿って一方向に
  続いていくものなんですよね。
  あの・・こういう猫の画像が出てきましたけど
  今この状況を画で見せられたら
  パッとこの状況はわかりますよね?



はい

:ですが、この状況は
  どういった状況ですかと聞かれたら
  どのように答えますか?

カップの中に猫が入っています。とってもかわいい猫です。
  こちらを見つめています。・・みたいな

:そう。というように、どんどん長くなっていくっていうか。
  画だと方向性がないですが
  言葉は事細かに説明をすればするほど一方向に長くなっていくと・・

  ごめんなさい操作ミスが・・



  で、こんな風に本が今の本の形になるまでの間に
  文章の特性というものがすごく大事になってきます。
  最初に文字が記されたメディアというのは
  こういった石碑とか粘土板っていうような
  固いものに書かれていて
  刃物でけずったり粘土板に型を押したりしていました。
  楔形文字なんていいますけどね。それは、道具の形によるものです。
  それが、(文字の)メディアの最初期なんですけど
  特にアジアの話でいくと
  その後に木簡という物が出てくるんですけど

はい。

:木簡ってどんなものかわかりますか?

木の札みたいなやつですよね。




:そうですね。こういう木の札で・・
  私たちが一番目にする物でイメージが近い物でいうと
  卒塔婆とか・・

うん

:お墓の後ろにへばりついて立ってるやつね。
  シャーマンキングという漫画で、あれを刀のように
  振り回して戦うというのがありますが・・
  ああいう使い方をしてはいけませんが。

  これに、文字を書いていた訳です。
  で、さっきのよりかは
  便利そうだなっていうのがわかりますよね。

  石やなんかよりも
  軽くて持ち運びやすいですし、
  形として細長いですよね。

  でも、細長いと一行くらいしか書けないんで
  束になるんですよ。
  こういうものになっていくんですね。


  これは、タイのバイタラ経って言って
  こういった板に、穴をあけます。


  穴があいててその穴に紐上の物を通して巻くんですよね。
  それによって何行も表現できるようになったし
  巻く事によって持ち運ぶ事も可能になりました。

  私たちが今、
  パソコン、ケータイ、スマートフォンで
  文字を打ったり
  何かを書いたり
  文字というかたちで
  何かを表現する時は
  けっこうくだらないことを
  書いたりもしますけど
  この時は、持ち運びが簡単になったとはいえ
  言うてもたいそうなものなので、
  やはり大事なことしか書かれなかったんです。
  お経とか役人の手習いとか
  そういうことにしか使われてなかったんですね。
  こういうふうに、
  糸をつなげて巻くというのは
  木簡とか竹を使った竹簡っていうのでやられてたんです。
  そのあとに紙がでてきたんですが
  紙は中国で発明されたものなので、
  日本とかアジア圏で紙は先に使われていたので
  これからの話は
  だいたいアジアの話になっちゃうんですけどね。
  巻物というものが出てきます。
  巻物というのがどういうものかというと
  だいたいこういう形ですよね。


  普段、私たちは巻物とか目にはしないですよね?

そうですよね。

巻物つかったことありますか?

ないと思う。



たぶんね。
  使わないのはすごく不便だからなんですよ。

はい

:それは、巻物を読むときには
  巻いてあるものを
  引っ張りだして読むんですけど
  引っ張りだして読むので
  1から10まで内容があるとしたら
  1から順番にたどっていかないと中身が
  全部読めないし
  引っ張っていくと
  どんどんどんどん長くなっていくので
  うまいこと巻いてやらないといけないんですね。
  今のもので・・
  今のものっていうのもちょっとあれなんですが
  これ(巻物)にすごく形が似ているものとしては、
  ビデオテープとか
  カセットテープとかっていうものがあげられます。


  こっちにこうテープが、巻いてあって
  こちら側(反対側)にも
  もうひとつ巻くもの(芯)があって


  この上の部分でデータを読み取って
  反対側にどんどん巻かれていく
  これを使うときに言葉として
  巻き戻しとか
  早送りという言葉がありますけど
  こんな風に巻いたり(送ったり)しないと見れなかった。
  だから、(無造作に本を開けて)
  こんな風にアクセスしようとしても(できなくて)
  こういうふうににカセットに入っているとこんなふうに
  途中の状態で止めておくこともできますけど
  紙の巻物のカセットなんてのは
  あんまり聞いたことがないのでなかったと思います。
  だから巻物はすごく不便で使いにくかったのです。

  こういうビデオテープにしても
  レンタルビデオで借りてきたやつを
  返すときに最初まで巻き戻してないと
  怒られたりしたじゃないですか
  昔の話ですけどね。

懐かしいですね。

:というような
  最初から見るようにするためには、
  最初の状態に戻しておかなければいけない
  すごく不便な部分がありました。

  (巻物も)読むのに不便だったので
  書かれている内容としては、
  木簡とさほどかわらなかったんです。

うん

:次に出てくる本の形式っていうのが
  折り本なんですけど、

  ちなみに今・・本の歴史を説明しています。
  うっかり何を始めたのかっていう感じでしたけどね。

  折り本って言ってどんなものか
  イメージできますかね?

はい。蛇腹になってるやつですか。朱印帖みたいな。

:そうです。


  これって結局さっきの巻物と
  (要素としては)あんまり変わんないんです。
  文字を紙に書くというところまでは
  基本的には変わらなくて
  一枚の紙の表面に
  文字が書かれている状態(までは同じ)で


  巻物は、

(手元のコピー用紙を巻きながら)



  こうやって巻いてたんですけど
  そうすると今ちょっと巻いただけでも
  すごいずれたりするし
  扱いが大変なんですけど・・
  これをこんな風に折っちゃえってやったら

(紙を蛇腹に折って、その片面だけをめくりながら)



  折っちゃたらこんなふうに 
  全部こっち面は見れる形になります。
  これは、便利だっていうことになって
  巻物から折り本と言う形になったんですけど
  これにも難点があったんです。
  だから、これも私たちが普段見ている本とは違う形ですよね。
  これはまあ
  ・・昔のものだなって認識してると。
  絵を見ていただくと
  想像しやすいと思うのですが
  あの・・なんて言ったらいいのかな
  片方だけ持ってたら
  なんか(一歩間違うと)びろーんって 
  なってしまうっていう
  そういう不便さがあったわけです。

  で、これが問題で・・
  これはびろーんってなっちゃうし
  折ってる部分がやぶれちゃったり
  とかっていう可能性が
  巻物の時よりも
  増えていたりするんですね。
  この構造になってくると。

  そういったことで
  そこからさらに改良されたのが
  冊子です。


  こういうものですけど
  冊子っていうものも
  今、日本や中国の話をしているので
  こういった形のもの(画面参照)が出てきますが
  えーとね・・
  今私たちが読んでいる本と基本的には変わらないですね。
  (折り本との違いは)片方が閉じてあるということです。
  こっち(片方)が固定してあると
  さっきみたいにびろーんってならないというのが特徴です。
  そんな感じですごく便利になりました。

はい。

:そういった形で、閉じ方には
  いろいろ変遷がありますし
  現状でもいろいろな種類がありあます。

  本っていうものは冊子という
  片方が開いてて片方がとじてあるという形に
  基本的には落ち着いていきました。

  もう一つ本について大事なこととしては
  印刷っていうのがありますが
  ここでは印刷についてはあんまり説明しません。
  長くなるので。 

  まず・・・印刷するっていうことは、
  複製するということですよね。
  全体のまとめみたいな感じで説明しますと・・
  まず、言葉というのがありました。
  それを図示したものとして文字が生まれ、
  言葉は物質になりました。
  そして、言葉は軽くて持ち運びできるものになっていきました。

  これによって
  言葉というその場で消えてしまうものが、
  触れるし、見えるし、運べるものに変化しました。
  それによって、
  言葉が時間と場所を越えるようになりました。
  印刷ができるようになると
  同じものが複製できるようになりましたと。

  複製できるということは、
  どういうことかというと
  同じ内容のものが
  時間と場所を越えるだけじゃなくて
  同時に読める人の数も増やすことになり
  時間、場所、人数の制限から
  解かれるようになりました。

  というようなことが、本というもののメディアの変遷です。
  このようにメディアが変化してきたら
  当然のことのようにして内容も変わってきているわけです。
  石碑とか碑文っていうかたちで残っているものって
  ものすごく大事なこと、王朝がどうこうとかっていうようなことが書かれてた。
  今でも、消えてほしくないものには
  消えにくいものに彫るという形で
  文字を刻んだりしますよね。
  例えば、建物の名前を示すのに
  紙を貼って建物の前に
  ペタって貼っとくっていうようなことは少なくて
  だいたい看板をたてたり表札をたてたりして
  劣化しにくいメディアをつかうと。

  今は、紙の印刷でいろんなことが表現できるようになって
  っていうことから
  さらにいうとネットとかの話になってくと
  「今、どこどこにいるなう」みたいな話とかが
  出てくるのはすごく”簡単に書ける”からなんですよね。
  メディアの特性として。
  メディアの特性としてというのは、
  twitterがほかのwebサービスに比べて
  簡単だという話ではなくて、
  紙とか石(とか粘土板)っていうものと比べたときに
  すごく簡単に広まりますよねということです。  
  だけど、すごくヤワであると。
  管理とかをちゃんとしないと残らないですし、
  薄っぺらかったりとか、
  単なるデータとかになってしまうので
  どんどん隠れていってしまうと。
  その代わり別に重要なことではなかったり
  別に偉くない人の言葉とかそういうものが
  文字になってメディアの上に載ることが
  どんどんやりやすくなっていった
  というふうに変化してきました。

  本というのは(物質として、メディアとして)
  こういう歴史をたどってきたので
  それに対してなにか考えたりしたことを
  受け止めてくれるメディアでもあると思います。

はい。

part3に続く)